日本創業の原点・神武天皇(7)
2006年 11月 17日
(平成12年10月7日、第十五回歴史体験セミナー、研修Ⅰ)
(7)五大神勅について
これが『日本書紀』正文で語られている物語の粗筋です。ここで、正文以外の異説を記録した部分に書かれていることについても少し触れておきたいと思います。というのは、有名な「三種の神器」や「天壌無窮の神勅」についての記事は、実は正文ではなくて、異説を記録した部分に載せられているからです。以下、異説を一書の第一、第二、第三・・・と言う形で区別します。
その中の一書の第一では、天照大神がニニギノ尊に三種の神器、すなわち鏡、剣、勾玉を授けられます。それから、五部神(イツトモノオのカミたち)ーこれはさっき申し上げましたが、天岩窟の時に、天照大神を呼び出すために苦労された神々、つまり、思兼神や手力男神などーに、部下としてニニギノ尊のお供をして降だるように命令される。さらに、わゆる「天壌無窮の神勅」(葦原の中つ国は私の子孫が永久に治める国だという宣言)を与えられています。
次に一書の第二では、ニニギノ尊のお母さんのお父さん、つまり母方のお祖父さんにあたるタカミムスビノ神が、ニニギノ尊について行かれる家来の神々であるアメノコヤネノ命とフトダマノ命に「神籬磐境(ひもろぎいわさか)の神勅」を下されます。「神籬磐境」というのは、天上界でお祭りをする時に必要な祭壇のことですが、これを持って地上に降って、天孫のため、つまりニニギノ尊およびその子孫の天皇方ために、お祭りをしなさいという命令です。
正文では天孫のニニギノ尊が直ちに降られたということになっていますが、この一書の第二では、お父さんのオシホミミノ尊が天降られる途中でニニギノ尊がお生まれになったので、急遽にお父さんに代わって降られたということになっています。そして、その前に天照大神が息子であるオシホミミノ尊に示されとされる神勅が二つ載っています。一つは、「宝鏡奉斎(ほうきょうほうさい)の神勅」と呼ばれるもので、三種の神器の一つである鏡を私だと思って祭りなさいという御命令です。もう一つは、「斎庭稲穂(ゆにわのいなほ)の神勅」で、これは高天原で作られている稲を授けるからこれで国民を養いなさいという御命令です。また、天照大神は、アメノコヤネノ命とフトダマノ命に対しても「侍殿防護(じでんぼうご)の神勅」を与えています。これは「宝鏡奉斎の神勅」と対をなすもので、「おまえたちはニニギノ命と同じ建物の中にいて侍って守れ」という命令です。
以上のような諸伝の中からは、この国の主たる者はいかなる仕事する存在でなければならないと考えられていたのかが、おおよそ浮かび上がってきます。つまり、天照大神の心を心として国民を治め、いつも天照大神から授けられた鏡を見て自分の統治が正しいかどうかを反省し、稲を見事に育てて国民を養い、それを大神に報告しなければならないわけです。(つづく)
(7)五大神勅について
これが『日本書紀』正文で語られている物語の粗筋です。ここで、正文以外の異説を記録した部分に書かれていることについても少し触れておきたいと思います。というのは、有名な「三種の神器」や「天壌無窮の神勅」についての記事は、実は正文ではなくて、異説を記録した部分に載せられているからです。以下、異説を一書の第一、第二、第三・・・と言う形で区別します。
その中の一書の第一では、天照大神がニニギノ尊に三種の神器、すなわち鏡、剣、勾玉を授けられます。それから、五部神(イツトモノオのカミたち)ーこれはさっき申し上げましたが、天岩窟の時に、天照大神を呼び出すために苦労された神々、つまり、思兼神や手力男神などーに、部下としてニニギノ尊のお供をして降だるように命令される。さらに、わゆる「天壌無窮の神勅」(葦原の中つ国は私の子孫が永久に治める国だという宣言)を与えられています。
次に一書の第二では、ニニギノ尊のお母さんのお父さん、つまり母方のお祖父さんにあたるタカミムスビノ神が、ニニギノ尊について行かれる家来の神々であるアメノコヤネノ命とフトダマノ命に「神籬磐境(ひもろぎいわさか)の神勅」を下されます。「神籬磐境」というのは、天上界でお祭りをする時に必要な祭壇のことですが、これを持って地上に降って、天孫のため、つまりニニギノ尊およびその子孫の天皇方ために、お祭りをしなさいという命令です。
正文では天孫のニニギノ尊が直ちに降られたということになっていますが、この一書の第二では、お父さんのオシホミミノ尊が天降られる途中でニニギノ尊がお生まれになったので、急遽にお父さんに代わって降られたということになっています。そして、その前に天照大神が息子であるオシホミミノ尊に示されとされる神勅が二つ載っています。一つは、「宝鏡奉斎(ほうきょうほうさい)の神勅」と呼ばれるもので、三種の神器の一つである鏡を私だと思って祭りなさいという御命令です。もう一つは、「斎庭稲穂(ゆにわのいなほ)の神勅」で、これは高天原で作られている稲を授けるからこれで国民を養いなさいという御命令です。また、天照大神は、アメノコヤネノ命とフトダマノ命に対しても「侍殿防護(じでんぼうご)の神勅」を与えています。これは「宝鏡奉斎の神勅」と対をなすもので、「おまえたちはニニギノ命と同じ建物の中にいて侍って守れ」という命令です。
以上のような諸伝の中からは、この国の主たる者はいかなる仕事する存在でなければならないと考えられていたのかが、おおよそ浮かび上がってきます。つまり、天照大神の心を心として国民を治め、いつも天照大神から授けられた鏡を見て自分の統治が正しいかどうかを反省し、稲を見事に育てて国民を養い、それを大神に報告しなければならないわけです。(つづく)
by nitta_hitoshi
| 2006-11-17 19:04
| 講演