新田均のコラムブログです


by nitta_hitoshi
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日本創業の原点・神武天皇(5)


(平成12年10月7日、第十五回歴史体験セミナー、研修Ⅰ)


(5)高天原の混乱と秩序の回復

 さて、サノオノ尊は、根国に行く前に、姉の天照大神に別れの挨拶をするために高天原へ昇っていきました。ところが、天照大神は弟の気持ちが分からずに、乱暴しにきたのだろうと疑い、戦う準備をして待ち受けていました。そこで、スサノオノ尊は、疑いを晴らすために誓約(うけい)、つまり、占いをすることを申し出ます。どういう占いをしたかと言いますと、お互いの持ち物を取り替えて子どもを生むという占いです。

 その時の初めの約束では、スサノオノ尊が生んだ神が男だったらスサノオノ尊の心は正しく、女だったら悪い心をもっているというものでした。このように確認した上で、お互いの持ち物交換して子どもを生みました。すると、天照大神は、スサノオノ尊がもっていた剣から、女性の神を生みました。タゴリヒメ、タギツヒメ、イチキシマヒメです。他方、スサノオノ尊は、天照大神が持っていた玉から、男の神を生むという結果になりました。マサカアカツカチハヤヒアマノオシホミミノ尊と、他に、アマノホヒノ命など男性の四神です。つまり、生んだという事実から見れば、スサノオノ尊は悪い心を持っていなかった、正しかったということが証明されたわけです。

 ところが、結果が出た後で、天照大神がなんと言ったかというと「あなたの生んだ子は私の持ち物から生まれたのだから、私の子だ」、つまり「私が男の神を生んだんだ」と言い出したわけです。勝負がついて後で、ルール変更して、強引に自分勝ちにしたわけです。兄弟喧嘩なんか、よくこういうことから起きますね。これは、どうみても高天原の中心者の神様としては相応しくない、不完全な振る舞いなわけです。そもそもが、天照大神が弟の気持ちを誤解したので占いをしなければならなくなったわけですから、誤解したこと自体が神様としては問題なのに、その上、自分の間違いを認めずに、強引にルールを枉げて自分の正しさを主張しようとしたわけです。このように、この時までの天照大神は、高天原の中心者として、まだ完全ではなかったわけです。

 このような天照大神の振る舞いにスサノオノ尊は激怒します。今の言葉で言えば「切れた」わけです。そして、高天原で大暴れを始めます。そうしたら、天照大神はどうしたかというと、今度は弟を止めようとしないで、天の石窟という穴の中に隠れてしまいました。よっぽど後ろめたかったのかもしれませんが、問題に立ち向かうことを避けて、いわば「引きこもってしまった」わけです。そうしたら、高天原は、真っ暗になって、様々な災いが次々に起こるようになりました。

 色々と素晴らしい力をもった神様たちが高天原には沢山いらしたにもかかわらず、秩序の中心者、太陽のカミ、神々に光のエネルギーを与える存在がなくなってしまったら、大混乱に陥ってしまったわけです。

 困った神々は、天安河辺(あめのやすのかわら)という所にあつまって対策を相談しました。その時に、智恵の神様、思兼神というカミの提案で、石窟の前でお祭りや踊りをして、天照大神が不思議におもって戸を開けた時に、力持ちの神様、手力雄神に引き出してもらうことにしました。この計画がうまくいきまして、再び天照大神を高天原の中心者に復帰させることができました。

 実は、この時に天の石窟の前で行って祭りや踊りが、神道の祭祀、お祭りや、神様を楽しませるための踊り、神楽のはじまりなのです。

 このような失敗と引きこもりという試練を経て、天照大神は天上の中心者に相応しい、人間でいえば人格、神様ですから「神格」に成長するわけです。

 他方、スサノオノ尊はどうなったかと言いますと、大暴れして罪で高天原を追放されまして、葦原中国に降りてくる。そして、出雲の国に行き、そこで、奇稲田姫という女性に出会い、その女性を食べようとしていた八岐大蛇という怪物を退治するという、これまた試練を経て、一人前の男、立派な神、単なる乱暴者から、英雄へと変身していきます。

 このように神様も、最初から完全なのではなくて、様々な失敗や試練を経て、成長していく、完成していく、というのが日本神話の特徴です。神様ですらそうなのですから、人間がいろんな失敗や挫折をするのたは当たり前です。大切なのは、失敗しない、間違えないということではなくて、失敗や間違えから、何か大切なことを学んで成長することなのだ。日本の神話には、そんなメッセージが込められているような気がします。です。

 さて、こうして天上の秩序が整うと、次に地上の秩序を整えるという作業に、神話の筋は移っていきます。(つづく)
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by nitta_hitoshi | 2006-11-05 09:03 | 講演