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新田均のコラムブログです


by nitta_hitoshi
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世代の責任(平成15年7月26日)

古い文章で申し訳ないのですが、平成15年6月からはじまった「産経新聞」三重版の「心のシンフォニー」という欄に書いたエッセイをしばらく載せて行くことにします。

新田均

 わずか三年ほどの間だが、大学の野球部の顧問をしたことがある。その時に、「先輩達が残した借金をどうするか」というとこが大問題になった。大学から支給されるクラブ費がわずかなために、代々の学生たちはアルバイトで道具代を賄ってきたが、それでも足りずに用品店に借金をし続けていたらしい。それが、後へ後へと繰り越されていく内に、もう何を買ったかも分からないような借金が何十万円にも膨らみ、一度清算しなければこれ以上は何も買えないという状態になっていた。

「どうしたらいいでしょうか」と学生から相談されたのは、顧問就任二年目のことだった。そこで、部員達を集めて相談することにしたのだが、その借金は、私にとっても、その時の在学生たちにとっても、「俺達のせいじゃないよ」と言いたい代物だった。しかし、話し合いの結果、学生たちはこんな結論を出した。
「みんなで一斉にバイトをして返そう。自分たちの練習時間を犠牲にするのは不本意だが、野球部の存続には代えられない」
彼らは大した試合成績こそ残さなかったものの、借金を清算し、立派にクラブを後輩たちに受け渡して卒業していった。そんな彼らを、私は今でも密かに誇りに思っている。

 歴史を学んでいると、彼らのように、必ずしも自分たちの責任ではない苦労を、まじめに背負ってくれた名もない人々が沢山いたことに気づく。そのような人々こそ、この国の存続と繁栄を支えてきたもっとも大切な「インフラ」だったと思う。だが、その「美質」を、今の私たちは急速に失いつつあるような気がしてならない。
濡れ手に泡の大儲けを夢見た果ての不良債権の山。後へ後へと先送りされ、もはや庶民の想像をはるかに超えてしまった国の膨大な借金。昨年六月の統計では、赤ん坊まで含めて、国民一人当たりの借金が過去最悪の477万円にも達しているという。それでも、まだまだ国の金で「景気を回復してもらいたい」「老後の福祉を充実して欲しい」などという虫のいい願いを棄てきれない者が多い。

 だが、ツケを回された世代は、この時代の大人たちの老後をちゃんと支えてくれるだろうか。自らの豊かさだけを追及した世代に、明るい未来や、誇りある老後など、本当にやって来るのだろうか。
by nitta_hitoshi | 2006-09-13 07:00 | 心のシンフォニー