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新田均のコラムブログです


by nitta_hitoshi
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憲法タウンミーティング(2)

質問2.現行憲法は現代の社会に適応しているか?

≪現行憲法は、冷戦以前の国際情勢を前提として、当時アメリカが考えていた未来予測に基づいて作成されたものです。ところが、その後の世界は冷戦の発生と終結、社会主義の崩壊とその後の文明を軸とした新たな対立構造の発生という二つの大きな変動を経験することになった。その点からすれば、日本国憲法は二世代前の憲法である。≫


 現行憲法の前文には、この憲法が前提としている世界観が書かれています。
「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないように決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」
「平和を愛する諸国民の公正と正義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」

 ここにあらわれているのは、日本、ドイツ、イタリアという不法国家さえ、大人しくしていれば、世界は自然に平和になるという、アメリカを中心とする当時の連合国の国際情勢理解に基づいた未来予測です。

 ところが、この予想は、あっと言う間に崩れて、はやくも日本の占領中に米ソの対立が始まり、平和を愛するアメリカと中国とが朝鮮戦争で激突するという事態が起きてしまいました。そこで、アメリカ・西ヨーロッパを中心とした自由主義諸国と、ソ連・中国を中心とした社会主義の対立という国際情勢の変化に対応するために、現憲法の前提や立て前に反して、日米安全保障条約を結び、自衛隊を組織するということになったわけです。

 したがって、現憲法は、本質的には、冷戦がはじまり、すべての連合国と平和条約を一挙に結ぶことが不可能になった時点で、すでに国際社会に適応していなかったと言えます。それにもかかわらず、憲法がそのまま続いてきたのは、厳しい国際情勢に自主的に対処していく自信と気力を日本が喪失し、経済的繁栄を求める道を選んだのと、そのような日本の選択をアメリカもよしとしたからです。日本が再び手強い競争相手となるよりは、経済的繁栄と平和憲法という美名の下で気概を失っていってくれた方が扱いやすい、それがアメリカの国益に叶うと考えたのだと思います。

 しかし、いまや国際情勢はさらに変化しました。アメリカのライバルであったソ連が崩壊し、社会主義国が次々に消えていった時には、これで世界から紛争は消え、もはや戦争など起こらなくなると楽観視に考えた人々もいました。ところが、事実は逆で、社会主義国家が崩壊すると、それらの地域では民族や宗教の違いによる内戦が勃発する。石油地帯においてアメリカとイスラム勢力との戦争や紛争が続発する。核を保有する中国が急激な軍拡を続け、経済力をも背景にして、国内ではチベット人やウイグル人を弾圧し、日本の排他的経済水域内の地下資源を狙いはじめました。さらに、アメリカはその中国を日本よりも重視する方向に動き出しています。

 こういう情勢の中で、二世代も前の憲法を後生大事に持ち続け、その古い古い世界観を次代を担う子供達に教えつづけ、アメリカ依存の心理から抜け出させないようにし続けるなどというということは、とてもバカげたことだと思います。

 も一つ言えば、近代憲法が前提としている、政府権力の制限による人権保障という枠組みそのものが時代遅れとなって、現代の社会に適合しなくなっています。

 いま我々の前で起きている現実は、国家が強く元気で豊かでなければ、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限の生活を営む権利」も、「社会福祉、社会保障及び公衆衛生」も実現できないということです。政府が戦争をしないように国民が見張っているだけでいい、出来るだけ多くの権利を政府に対して要求すれば、それで幸せになれる。政府が、その国民の欲求に答えて大盤振舞すれば、それでみんな幸せ。こういう考えが幻想、妄想に過ぎないことを証明してみせたという点で、民主党政権の功績は大きかったと私は思っています。
by nitta_hitoshi | 2010-05-14 20:05 | 講演