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新田均のコラムブログです


by nitta_hitoshi
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恐るべし!ジンダー・フリー(5)

[「吉野熊野新聞」平成14年9月30日]

 この連載をここまで読まれた方は、ジェンダー・フリー社会を目指す人々は、家族を解体し、フリー・セックスを奨励して、一体全体どんな社会を創ろうとしているのか、と疑問に思われたと思う。八木秀次高崎経済大学助教授が「『男女共同参画』なんてカルトじゃないか」(『諸君』平成十三年一月号)という論文の中でこの疑問に答えてくれている。

 それによれば、「フェミニズム」という言葉を発明したのは十九世紀フランスの「空想的社会主義者」フランソワ・マリー・シャルル・フーリエである。フーリエは、家族を単位とする小農場経営こそが生産力の向上を阻害し、個人の自由を妨げる原因だと見て、家族制度を廃止して、各人が男女を問わず能力に応じて生産集団・生活集団を組織する「ファランステール」という「ジェンダー・フリー社会」を構想した。

 この社会においては、一夫一婦制は無意味となり、恋愛や結婚は従来の拘束から解放されて、いつでも解約可能な任意の結婚(つまり、スワッピングや雑婚)となり、子供たちは共同体の手によって育てられ、老人もまた共同体によって看護されることになる。男女とも同じ教育を受け、同じ経験を分かち合い、同じ職業の準備をするために、幼年時代からスカートとズボンという衣服で男女を区別することは避けられる。まさしく、「ジェンダー・フリー教育」そのものだ。

 このフーリエの構想は、共産主義の父であるマルクスやエンゲルスに受け継がれた。特にエンゲルスは、階級対立、支配・被支配の関係を男女の関係に当てはめて、家族は男が女を支配するための制度であるとして、女性解放のために、女性の社会進出の必要性を説いた。

 これらの思想を現実の政策として実施したのが、ロシア革命の立役者レーニンだった。彼は女性を家族制度の束縛から解放し、労働者として自立させるために、家事労働の共同化、保育所の設置、性の自由を奨励した。こうして見ると、「男女共同参画社会」=「共産主義社会」と言われる理由がよく分かる。また、かつては共産主義社会の実現を夢見ていた日教組が、ジェンダー・フリー教育に熱心な理由も理解できる。

 ところが、このレーニンの政策は大失敗して、ロシア社会は、堕胎と離婚の激増、出生率の低下、家族・親子関係の希薄化による少年犯罪の激増という事態に陥った。このために、ソ連政府は一九三四年にそれまでの家族政策を根本的に見直して、フーリエ以来の構想と決別し、家族を「社会の柱」として再強化した。すなわち、妊娠中絶を禁止し、離婚手続きを複雑化させ、子ども教育における両親の責任を重くした。家族が国家の基礎単位として重視され、女性は自由な市民としてよりは母として尊重されるようになった、というのである。(つづく)
by nitta_hitoshi | 2007-03-01 20:36 | 新聞