新田均のコラムブログです


by nitta_hitoshi
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ジョン・ブリーン著『儀礼と権力ー天皇の明治維新』を吟味するー「語り」によって隠されたものは何か (4)

二、エリック・サントナー氏の論文内容の創作

 ブリーン教授の方法論的問題点を最も如実に示しているのが、「付論」で展開されているエリック・サントナー氏の業績についての「語り」である。ブリーン教授は靖国神社が語る戦争記憶を評価する基準としてサントナー氏の業績を持ちだし、次のように書いている。

「フランスの歴史家エリック・サントナーの戦争記憶研究が重要な手がかりを与えてくれるように思う。サントナーの研究はフランスで戦後間もなく建てられた博物館、記念施設を主題とする。ドゴール派が建てた博物館もあれば共産党が建てた記念施設もあるが、共通する特徴は、フランスの戦争体験が生産した「トラウマ」、つまり、敗北、占領それに協力(コラボレーション)という精神的外傷を抑圧する働きをする、と彼は言う。サントナーは歴史的トラウマの痛みを受け入れることを拒む、あるいは受け入れることができないのは、戦後のフランスばかりではもちろんなく、多くの戦後社会がある程度共有する現象だとする。戦争記憶が耐えるにはあまりに痛すぎるためそれを抑圧し、抑圧するための記憶戦略を演じる、という。「神話作成」であるこの記憶戦略を、サントナーは「語りのフェティシズム」と名づける」(二七九ー二八○頁)

 ブリーン教授に言わせると、靖国神社の語る歴史は「まさにサントナー氏のいうところの「語りのフェティシズム」の範疇に入る」(二八○頁)。
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by nitta_hitoshi | 2013-02-01 23:47 | 英訳原文