新田均のコラムブログです


by nitta_hitoshi
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書評『皇位継承の危機いまだ去らず』(櫻井よしこ・大原康男・茂木貞純著、扶桑社)

『日本の息吹』(平成22年2月号)

 平成十八年九月六日、悠仁親王殿下がご誕生になられた。この年は、年始早々、「皇室典範に関する有識者会議」の報告書に基づいて、「女性・女系天皇の容認」「長子優先」を骨子とする皇室典範改正案が国会に上程され、そのままであれば可決成立するはずだった。ところが、二月七日、突如、紀子殿下ご懐妊が報じられ、上程は中止。さらに悠仁殿下のご誕生によって法案はお蔵入りとなった。

 その直後、扶桑社発行の季刊誌『皇室』は、四回にわたって櫻井よしこ氏と大原康男氏の皇位継承問題を中心とした対談(司会・茂木貞純氏)を掲載した。本書はその連載に、櫻井・大原両氏による現時点での「皇位継承」問題の動向分析と今後の課題に関する新たな論考を加え(第一章)、さらに茂木貞純氏による「神話から現代に続く天皇の歴史」と「皇室を理解するためのQ&A」(第二章)、有識者会議の報告書の全文ならびに現・旧皇室典範などの資料集(第三章)とからなっている。

 本書の内容の特徴を大まかに言えば二つである。一つは、皇室について極めて深い造詣を有する識者による「天皇入門」の書であるということだ。皇位継承問題は天皇の本質と切り離せない。そこで、まず、天皇の本質を「政治」「文化」「宗教」という三つの方向から論じ、天皇には“日本の秩序の中心”“文化・学問の庇護者・継承者”“社会活動の実践者”“神様を祀る祭り主”といった役割があるとする。

 本書の特徴の二つ目は、もちろん、皇位継承をめぐる問題の整理とその解決策の提示である。言い換えれば、皇位の男系継承を維持することのこの上ない重要性の指摘と、その方策の提案である。示唆に富む多くの議論の中で、今回、私が改めて大切だと感じた点は、いま皇室が直面して居られる男系継承の危機は、自然発生的なものではなく、GHQの圧力による十一宮家・五十一人の方の皇籍離脱という皇室弱体化のための意図的、人工的な政策が根本原因であるということである。

 このことを踏まえ、一貫して男系を維持してこられた皇室の歴史に思いをいたせば、“心ならずも皇族たる身分を離れざるを得なかった方々の男系の御子孫の中から適切な方に皇籍を取得していただいて宮家を新たに創設していただくという宮家の拡充策”こそ、皇室典範改正の第一義でなければならないという本書の主張に違和感を抱く者はいないであろう。

 しかし、残念ながら、悠仁殿下ご誕生の後の政治情勢もあって、皇室典範には全く手がつけられていない。その間隙を縫うように、女系天皇容認論も息を吹き返しつつある。民主党政権の本質を考えれると、これは極めて危険な状況と言えよう。そうであればこそ、多くの良識ある人々に本書を手にとっていただき、深く本質を理解していただきたいと切に願う。
 
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by nitta_hitoshi | 2010-02-16 08:55 | 書評